こんにちは!毎日毎日ゲーム三昧のおふとんです。

毎週土曜日は、夫が子供を見てくれる日です。 そうです、丸一日自由な日なのです。超贅沢。もう何してもいいの。

先日「マーウェン」を観てから映画館で映画を観たい欲がふつふつと湧いてきて、今回の土曜日も観に行くことにしました。

今日公開の「ジョーカー」を観に行こうかと思っていたのですが、もっと心が温まるような映画が観たいなあということで、「エセルとアーネスト -2人の物語-」を観ることに。

劇場の岩波ホールは初めてだったのですが、なかなか味がありますね。 古本のメッカといわれる神保町にあるのですが、劇場の周りにはその名の通り古本屋さんばかりで胸が高鳴ります。

ただ古本屋さんの風貌は大好きなのですが、狭くてね…ゆっくり見れないよね。知らない人の家にお邪魔する感覚になります。まあそれでもみんな本だけに集中していて、好きなものに夢中な状態の人って美しいよなあとチラチラ見つつ劇場へ向かいました。

心は全然温まらなかった

この映画が「スノーマン」の著者が描いた話だということを忘れていたんですよ。
「スノーマン」は小さな頃から好きな映画なのですが、あのなんともいえない後味。ずっとずっと心にひっかかる情景。

「エセルとアーネスト」もそんな感じの映画でした。思わずパンフレットも買ってしまった。最近みた映画の中ではベストでした!(全然映画観てないから当てにならない)

この映画は著者であるレイモンドフリッグズさんの両親の、出会いから死ぬまでのお話です。
心は温まりませんでしたが、肩をトンと叩かれて「大丈夫だよ」とアーネストに言われた気がしました。

仲の良い夫婦の最後を観てみたかった

「エセルとアーネスト」を観に行った大きな理由のひとつは、仲の良い夫婦の片方が亡くなった時、その悲しみをどう描くんだろうということに興味を持ったからです。

私は一緒に暮らして10年の夫がいます。 結婚したのは4年前ではありますが、一緒にいても全然飽きなくてとっても優しい夫のことが大好きです。
けれどこのまま歳をとり彼の最後に立ち会うのかもしれないと考えただけで、今の幸せが全てなくなってしまうような感覚に陥ってしまうのです。

この映画は悲しみをどんな風に描いていたのかといいますと、まさに「スノーマン」の最後と同じような感覚になるような描き方でした。
そこをフォーカスするのでもなく、ふんわりまとめるのでもなく、ただ事実だけを描くだけ。まじで…もう私立ち直れない…。

妻のエセルが先に体調を悪くして入院し、最後には伴侶である夫アーネストのことも忘れてしまい亡くなります。 著者のレイモンドが、父親のアーネストから「亡くなった」と電話をもらって会いに行った母親は、 消毒液で綺麗にされた裸を白い布で包み、タンカに乗せられた状態でした。

40年以上連れ添った妻を亡くしたアーネストは、深い深い悲しみが癒えないままに体調を悪くし、そのまま病室のベッドで口をぱっかりと開けてあっという間に亡くなります。

それでこの映画は終わり。

私はずっと夫よりも必ず先に死にたいと願っていて、神社にお参りをした時には「夫よりも先に死なせてください」とお祈りするぐらいその思いは強いです。
けれど、夫を亡くした妻というのは案外すぐに人生を謳歌し始めるというのをどこかで読んでからは「そうかもしれない。気を強く持とう」とけっこうポジティブな心持ちで生き始められていました。

けれどこの映画を観て、やっぱり当初の考えは間違っていなかったんだなと思いました。
やっぱり夫より早く死にたい。夫を亡くしたあとの人生なんて考えたくないですわ。

とはいってもですね、それでも、この映画は本当に美しいなあと思ったのです。
エセルがいなくなり、家の花が枯れた状態のままで1人過ごすアーネスト。2人分のご飯を思わず作ってしまい、悲しみに心が浸かった状態で過ごす日常というのも、これもまた人生なわけです。

悲しみがあるのは幸せを知っているからです。温かな思い出があるからなんですよね。

悲しみの心のままで、最後は子供に手を握られながら病室で死ぬことの尊さは、素晴らしい人生の最後にそっと寄り添うカーテンみたいじゃないですか。ふわっふわですよ。

そのままを受け入れながら生きたり死んだりしたい

「エセルとアーネスト」を観る限り、妻や夫を亡くすというのはやはりとてもダメージの大きい出来事なようです。 それでも悲しい、辛いと感じながら毎日を過ごすのも悪くないのかもしれないです。

以前夫に「私が死んだらどうなる?悲しい?生きる?ちなみに私はあなたが死んだらすぐ後追うよ!」と質問したところ、

「すごく悲しい。今考えてみたけど辛い。でもそれでも生きるよ」と言っていて、 ああ、これだから私は夫のことが好きなんだよと惚れ惚れしたと共に、それが人生を全うするということなんだなと覚悟を少しだけ決めました。少しだけね。

戦争はよくない

戦時中の大変な生活も描いていて、もうこの映画の半分は泣いていました。

まだ5歳の息子レイモンドを疎開させるために乗せた、列車を追いかけてうずくまるエセル、この姿を見て泣かない親はいるんか。2歳の子を持つ私の心は容赦なくグサグサ刺されてもう涙の洪水ですよ。でも映画館で泣くのは恥ずかしく思ってしまうから、鼻水をすすらないようにして泣いてないふりをしました。

前編を通して朗らかで明るい性格のアーネストでさえ、山のような死体を見たりするうちに気が滅入り「疲れた」とこぼすんですよ。エネルは「ブーツを脱がせてあげる」と言いブーツを優しく脱がせるシーンがあり、こんな風な夜が続いて続いて、現在があるんだなと考えずにはいられませんでした。

自国がドイツと戦争を開始したというニュースを、ラジオに耳をそばだてて聴いた場面はとても緊張感がありました。自分が生きているこの場所が戦場になるというのはとても大きな衝撃があります。

「戦争は二度としてはいけない」とはみんなが言いますし思っています。私もそう強く思っています。 けれど強く思っていたとしても戦争が始まればただ巻き込まれてゆきます。
どうすればいいか分からないですが、平成のように令和も戦争がない時代でありたい。ただ地球上では戦争が絶えないです。私たち人間は、本当に愚かです。

終わりに

戦争や死の部分ばかりに目を向けてしまい悲しい映画でした、みたいな記事になってしまいましたが、この記事よりは明るく愉快ですよ。よくある夫婦喧嘩や、子供の進路で険悪になる場面も描いていたりして。それでも堅実な映画でした。

レイモンドさんが描くイラストが超可愛くて丁寧で、内容の密度とあいまって宝物みたいな作品だなあと思いました。大好きな夫と息子の3人でもう一度観たい!

アニメ映画ですが、始まりは実写のレイモンドさんがお家でゆったりとお茶を入れているところから始まります。スノーマンが描かれたコップ、歳を重ねたレイモンドさん、窓の外からふっくらと日が差し込んでいるこのシーン。 そんな冒頭になんでか知らんが感極まってしまい、涙を流しながら本編のアニメを観始めることになるという驚きの映画でした。本編はそれ以上に泣くんですけどね…。

育児と仕事で毎日ヘトヘトな日常を送っていますが、それでも私にとっては何物にも代え難い日々なので、最後のその日まで大切に過ごしていこうと心に誓いました。

あと監督脚本のロジャーメインウッドさんが「これはレイモンドフリッグズのための映画」だと言っていて、自分のための作品だからこそ他人に伝わるものがあるよね!と励みになりました。私も自分のためだけに文章を書いているのです。

「エセルとアーネスト」が素晴らしすぎたので、岩波ホールにがぜん興味が出てきました。公式サイトが余白の取り方が綺麗で美しいから見て。定期的に通ってみよう。
私が観た回には7、80人ぐらいの人が観にきていたのですが、エンドロールが始まっても1人も立ち上がることなく見終えたことがすごく印象的でした。

おふとん
おふとん

小さくて可愛い家を購入したくなる映画だった。家が欲しい!

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